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コラム

枠組みあれど、運用者とメディアが鈍く
法律と制度から見る精神疾患者・障がい者

国の「障害者」のかたち

精神疾患者や精神障がい者の就労を支援する立場として、常に考えなければならないのは、精神疾患がどのように社会で位置づけられているか、への深い洞察である。それは、イメージの世界でもあり、イメージが作り上げる実像でもある。ここには人の印象を束ねるマスメディアの影響も大きい。ただ、伝えるメディアが絶対的に精神疾患者との交わりの薄さにより、当事者意識が欠如している。そのため、伝える上で依拠するのは、障害者の社会的位置づけを決定している法律や医療制度でしかない。

メディアにおける精神疾患者の独自な視点や研究は進んでいないための普遍的な価値を追究する姿勢も見られないのも課題であるが、結局法律と制度を見れば、日本における障害者の「かたち」が浮かび上がってくる。国連決議と法整備、そして自治体の施策を見ながら、今後の議論の参考にしてもらいたい。

 1975年第30回国連総会での決議された「障害者の権利宣言」によれば、「『障害者』という言葉は、先天的か否かにかかわらず、身体的又は精神的能力の欠如のために、通常の個人又は社会生活に必要なことを確保することが、自分自身では完全に又は部分的にできない人のことを意味する」 と定義している。

日本では障害者福祉の基本理念を定めた「障害者基本法」で「障害者とは、身体障害、知的障害又は精神障害があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」と規定しており、1993年の改定で精神障害者が加えられた。

幸福に向けた「自立」

 さらに障害者が幸福に生きられるように定めたのが、2013年に「障害者自立支援法」から改正により名称変更された「障害者総合支援法」である。同法の目的は「障害者基本法の基本的な理念にのっとり、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、児童福祉法 その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする」 である。

障害者支援の政策についての議論を経て、改正では「自立」の代わりに「基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい」と明記し、障害福祉サービスの給付と地域生活支援事業による支援を「総合的」に行うこととしている。

つまり、官製の「自立」は障害者への圧迫となり、「自立すること」が義務のように捉えられていたのがほんの数年前である。そのため、今でも自治体では自立こそ幸福のような考えも少なくない。関わり合いの中で、まずは「そのままでいい」とはならないのは、長年の習性なのだろうか。

さらに当事者が悩まされ続けている「差別」「偏見」についても法整備の議論が進み、スティグマや社会での生きづらさの解消に向けて、2016年4月から「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)が施行された。

これは国連の「障害者の権利に関する条約」締結に向けた国内法制度の整備の一環であり、内閣府の発表では「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的」としている。

 当事者だけに焦点を当てるのではなく、国全体として、特に自治体や事業者にも「合理的配慮」を求めているのが特徴であるが、合理的配慮こそが、今後国民的な議論となることが予想され、その際に果たすメディアの役割の大きさを考えると、メディアのさらなる自覚を求めたいところではあるが、メディアの動きは鈍い。

企業の雇用率達成は半分

 精神疾患者の就労移行も、メディアの活動によりノーマライゼーションの気運とともに、「働きやすさ」を合理的配慮がなされている状態の上で考えていく必要がある。50人以上の企業に課している2%以上の法定雇用率(従業員に対する雇用している障害者の割合)も、達成しない場合の納付金の存在により、企業の担当者には浸透しつつあるが、法定雇用率という数字をクリアするだけのその場しのぎの対応も少なくない。いまだに雇用率の達成企業は全体の約半数(2016年夏時点、厚生労働省調査)という数字は、その切迫感のなさを示している。

 企業は、雇用率の達成度合いを報告する6月1日の数字だけを取り繕っている状況だから、社会や企業内で理解を深めようとの機運は、よほど企業の上層部が福祉政策への明確な考えを持っていなければ、企業の態度は変わらないだろう。雇用に向けても、合理的配慮に向けても、当事者目線での、当事者意識への気づきも必要となってくる。

 法律を忠実に実行する自治体や、雇用する企業、そして当事者と関わり合う身からすると、自治体には障害者福祉のサービスを「慎重に税金を投入する見極め」を理由に、障害者に対し威圧的な態度を取る人もまだ少なくない。それは自治体の福祉への取組み度合によって、その対応は違う。東京都や埼玉県の自治体を中心に関わりながら、自治体によって見事に対応が違う。ランクAもいれば、ランクF以下まで様々である。

東京都の政策は有効か

東京都でも23区、市町によって違うが、東京都の施策は豊富な予算もあり、問題点に焦点を当てている部分もある。例えば東京都の障害者就労に関する2016年度の「新障害者雇用政策」 は、同年に退陣した舛添要一前知事の「肝いり」(東京都担当者)の政策で、企業の文化を一部から変えていこうという理念であり、全国的に先駆けた考えのもとに立案された。

目玉政策である「障害者安定雇用奨励事業」は、有期雇用により不安定な障害者の雇用形態を「無期」にすることで、確実な就労定着と生活の安定が目的とし、有期から無期にする企業は1件につき約120万円が支給される。国は2%の法定雇用率の設定で障害者を企業が雇入れることを促進してはいるが、企業側もリスクヘッジのために正規雇用を避け、しかも定着への取組みまでの余裕はなく、短期間で退職してしまうケースも多い。この問題点に斬り込み、給付金制度で一気に定着させてしまう考えだ。

1人あたり給付額120万円は破格である。既存の制度では、障害者雇用に向けてトイレの改修やスロープの設置など環境整備にかかる助成金はあるものの、雇用形態の転換で使用目的が限定されない給付金は、企業にとってはありがたいはずで、同一年度の上限は10人だから、10人の転換もしくは無期雇用で企業は1200万円を得ることになる。

 さて、この施策は奏功するのだろうか、障害者を取り巻く企業文化を変えられるのだろうか。ここまで障害者に関する法律を見ていくと、まだまだ運用側に課題がありそうで、障壁のない社会文化が形成され、定着するにはまだまだ努力が必要な気がする。

東京都の政策については、年度末に向けてはこの政策の有効性も検討し、報告したい。そして、法律に基づく私たちの取組みをより有効になるようにメディアの行動も含め、検証と議論を進めていきたいと思う。

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コラムニスト

    報告 ID:HZe9V2bznU

    病んでますが抜け出せない、助けてが言えない。こんにちはは言えた❗️

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