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コラム

精神科医療の“悪慣習”を無くせるか!?
厚労省が「ポリファーマシー」抑止に本腰

 多くの診療科の医師らが、「ポリファーマシー」に対する警戒感を強めている。急激な高齢化に伴い、何種類もの薬を投薬される高齢患者が急増したこと、その抑止のため厚生労働省も本腰を入れ、減薬に向けた取り組みを診療報酬改定に盛り込んだことで、もはやどこの医療機関にとっても、ポリファーマシー問題を“対岸の火事”では済ませられなくなったのだ。特に、多剤併用のやり玉にあげられやすい精神科医療では、一定以上の薬を併用した場合、継続外来支援・指導料が算定できないだけでなく、処方せん料及び処方料、薬剤料を減算する規定まで設けられている。『減薬政策』が本格的にスタートしたのを機に、多剤・大量投薬の悪慣習を是正できるか否かは、精神科病院の経営面ばかりでなく、社会的信用にまで影響を及ぼす重要課題と言えそうだ。

『まれにある副作用』が
多剤併用で複合的に発現

 「ポリファーマシー」という言葉と、多剤併用による副作用の危険性については、かなり以前から複数の医学会等で報告されていた。経口薬の大半は、肝臓で代謝されるか腎臓で体外排泄される設計なので、処方される薬の種類が増えるほど、臓器への負担が増大する。さらに、代謝酵素の影響や排泄経路が同じ薬を同時に服用すれば、血中濃度の推移や排泄時間も、単剤服用時とは異なる状態になる。何種類もの薬を同時に、継続的に服用すれば、それぞれの薬の『まれにある副作用』が、高頻度かつ複合的に現れるのは当然の結果と言える。

 ただ、使用薬剤が何種類を越えたらそうなりやすいのか、副作用がどのような現れ方をした場合に、「ポリファーマシーによる有害事象」と判断すべきか…といった明確な指針は、今のところ確立されていない。国内で使用される医薬品の種類は軽く1万を超えており、その膨大な組み合わせと、患者によって異なる副作用の現れ方とを、厳密にマッチングさせて「方程式」にする作業は、現実的に不可能に近い。

 昨秋施行された診療報酬改定では、入院・外来ともに、6種類以上の処方薬に対し2種類以上の減薬を行った場合、250点の薬剤総合評価調整管理料が算定できることになったので、5種類以上の薬剤使用がポリファーマシーに該当する…との意見も出されているが、複数疾患を抱えていることが珍しくない高齢者が急増する昨今、薬の数だけでポリファーマシーを定義するのは無理がある。実際、中央社会保険医療協議会による2015年度の通年集計によると、前期高齢者の11.7%、後期高齢者の27.3%が、複数の診療科で合計10種類以上の薬を処方されていた。高齢者に限らず若年層であっても、疾患の種類によっては、5種以上の薬剤を継続的に服用せざるを得ない場合もあるだろう。

 多剤併用による有害事象を解消するには、単に薬の数をカウントするだけではなく、処方の適正さ(複数処方が適切な症例と言えるか、不必要な薬は含まれていないかなど)を、エビデンスに基づいて評価するシステム作りが急務と言える。

「第一世代」抗精神病薬の影響で
多剤併用がスタンダードに

 ひと昔前まではかなりの数の精神科病院が、多剤・大量投薬を当たり前のように行っていた。その主因としてあげられるのは、いわゆる「第一世代」抗精神病薬が続々と開発されていた時期に、薬物療法の“スタンダード”が構築されたこと。

 相次いで登場した第一世代の抗精神病薬は、いずれもドパミン遮断が商品ごとに微妙に異なっているだけなのだが、製薬各社は「幻覚・妄想を解消する効果が高い」、「攻撃性を低減させる」など、何らかの特徴付けをした上で販売を行っていた。医師48対1、看護師4対1という少人数体制で医療を行う病院側としても、過鎮静にならない範囲で陽性症状を改善させることが最重要課題だったので、結果として何種類もの抗精神病薬を組み合わせて使い、その副作用を抑えるために別の薬を処方し、それらによる消化器系不調などのために、また別の薬を…といった多剤併用療法が、多くの精神科医療機関で行われていた。

 さらに、一定の信頼度を有する医学専門誌に、『単剤の量を増やすより少なめの複数薬を併用する方が、抗精神病薬の治療効果が高く副作用の危険性が低い』という主旨の複数報告が掲載されたことが、多剤・大量投薬の悪慣習に拍車をかけた。複数のベテラン精神科医に当時(と言っても、ほんの10数年前)の話を聞いたところ、例えば統合失調症治療の場合、幻覚や妄想を抑えるための抗精神病薬4~5種、感情安定薬1~2種、副作用対策として抗パーキンソン病薬と便秘薬2~3種、そして睡眠薬が、ほぼ「約束処方」として患者に与えられていたという。

 多剤併用を続けると、症状改善が見られても有効な薬が確定できないこと、副作用出現時も、その原因薬が特定できないこと、統合失調症治療に関しては、単剤と多剤併用とで長期予後に明らかな差が出ることが判明したこと、そして何よりも、オーバードースによる後遺症への危機感が高まってきたことから、近年は各地の精神科病院が、減薬に向けた取り組みを積極的に進めている。しかし一方で、薬物の相互作用や多剤併用による弊害に関する知識が欠如している医師、主に経営的観点から多剤・大量投与の慣習を改めていない医師が、皆無ではないことも事実だ。

病院薬剤師を中心とした
「薬のゲートキーパー」機能が肝要

 精神科に限らず様々な診療科で、今後ますます高齢患者が増加することは、火を見るよりも明らかだ。精神科病院においては、認知症患者の周辺症状に対する薬物療法の機会が急増するだろう。

 複数疾患を抱えている可能性が高く、加齢に伴う臓器機能の低下も避けられない高齢者の場合、ポリファーマシーによる副作用リスクも当然高くなる。そこで日本老年医学会は、同学会まとめによる「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」の中で、医療現場への薬剤師の積極介入を推奨している。漫然と処方されている薬に対して、相互作用の確認と処方の再設計、薬歴管理などについて薬剤師が直接介入することにより、多剤併用の有害事象防止と重篤化回避が見込めるというわけだ。

 ただし同ガイドラインでは、『薬を減らす=ポリファーマシー対策』では無いことも強調。本当に必要な種類・量の薬を医師と薬剤師が協働で検討し、最も適切と思われる薬物療法を実践することが真のポリファーマシー対策だと指摘している。

 高齢患者に対するポリファーマシー対策については、マーク・ビアーズ(アメリカの老年医学専門医)が提唱した「ビアーズ基準」の日本版に則って、不適切と思われる医薬品を極力使わないようにする方策も提言されている。精神科医療で多剤併用が特に多く見られるのは、抗精神病薬と睡眠薬だが、我が国の場合、高齢者に対する睡眠薬はBZD(ベンゾジアゼピン)系薬が突出して多い。ビアーズ基準日本版ではBZD系睡眠薬に対し、ロラゼパムやアルプラゾラムなどの短期作用型も、クロルジアゼポキシドやなどの長期作用型も、「使用しないことが望ましい薬」とされていることから、睡眠薬が必要な高齢者に対し、それらの薬の使用を段階的に中止している病院もあるようだ。

 また、抗精神病薬に関しては、病院薬剤師が全入院患者のCP換算値を出し、大量投与が見られる患者に対して、薬剤師をはじめ多職種で服用状況や副作用の状況などを協議。減薬の必要性を、主治医に提言する仕組みを作った精神科病院もある。

 いずれにせよ、ポリファーマシーによる有害事象を回避するためには、投薬を検討している薬に高齢者のエビデンスがあるのか、薬物療法以外の手段はないのかといった点を、事前に検討することが重要だ。認知症周辺症状への対応についても、病態そのものだけでなく、ADL(日常生活動作)や本人の嗜好、家庭環境などを充分に確認する必要がある。つまり、医師が漫然と処方するのではなく、院内における『薬のゲートキーパー』を、多職種協業で作っていくことが肝要と言えよう。

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コラムニスト

    報告 ID:fXDrfh32vr

    よくないねボタンも設置してもらいたいです。
    キュレーションサイトに厳しい目線が向けられる中、懲りないサイトですね。

    まずは自己批判から始めてはいかがですか?

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