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コラム

就労移行、それは社会的な治療
真剣に取り組んでいる者として

バラバラな認識

 私が埼玉県所沢市と和光市で就労移行支援事業所「シャローム所沢」「シャローム和光」の活動を通じて、「就労移行支援」という事業そのもの社会的な認知度が低いことを痛感している。障がい者の支援関連の仕事に携わっているならば、就労継続支援事業とともに、並び称されるが、いざ一般社会に出てみると驚くほど、障がい者や精神疾患者の社会進出や社会復帰を支援する仕組みには無知である。当事者や当事者が近くにいなければ当然ではあるが、多くの人が知ることによって事業所の持つレベルや支援する力が上がるはずで、その意味でますます認知度を上げていかなければならないと日々考えている。

知ってほしい、その矛先として考えるのは医師の方々である。

就労移行支援という公的サービスを受けるには障がい者手帳保持や通院歴などの条件があり、細かな手続きの流れは全国の地区町村によってバラバラである。地域の相談員の見解でサービス受給が可能な人もいれば、医師の見解が必要なところもある。そして、本人が利用したくても、医師の見解に苦労するところもある。

それは医師自身が就労移行支援を知らないまま、判断してしまっているケースが多い。就労に向けて当事者に社会生活のルールを教えることを、一定の厳しさを持って行っているというイメージのもとに、医師が「就労移行の訓練はまだ早い」との見解を出されることがある。それは「訓練」という言葉が持つイメージを勝手に解釈しての判断であり、医師には、われわれの事業所が誰よりも寄り添って支援をする姿勢であることを知ってほしいと思う。

誰の為の制度か

 餅は餅屋で買うものだから、医師の領域を何か指摘するつもりはないのだが、社会的に一ヶ月や数週間に一度、診察をする医師と違い、私たちは日々関わり合い、毎日顔を会わし、個々人の状態の浮き沈みを見ているから、当事者の状態を線と面で見ることができる。「訓練」と言っても、その人の特性に合わせたプログラムだから、決して無理させることなく、一般企業や社会に向けて確実に同伴している自負がある。

 目指すのは、「社会的な」治療ともいえる。

しかしながら、就労移行支援という事業全体を見た時、課題は多い。

全国約2600ある就労移行支援事業所のうち、真剣に一般企業に就労させようと取り組み、結果として実績を上げている事業所はすべてではない、ということである。

障害者総合支援法が定める福祉サービスの中でも新参者だから、一般企業への就労は一般企業の協力なくしては考えられず、どのように一般企業への道筋を付けられるかが課題。私のような新興の事業所では、それら問題点を吟味した上で、福祉と企業論理のアプローチを考えての取り組みを行っている。法定雇用率の上昇も見込まれる中で、福祉の考えと企業の考えのどちらも理解できるスタッフが企業と障がい者をつなげ、結び、多くの形を作るしかない。そもそも制度は自治体でも医師のためでもなく、当事者のためにあるのだから、それを深く理解し行動し続けるのが過渡期である今求められる使命かもしれない。

「措置」で尊厳は奪われる

 「就労移行は早いのではないか」。

そんな意見を医師ではなく、相談員や自治体の窓口で言われることがある。支援計画書を自治体のフォーマットなどに応じて記載していくと、文面ではどうしても障がいや病状による心配を書かなければならないから、当然と「その人が病気の中にいる」という温度観の中で書面は出来上がる。健康状態ではない人の次のステップのタイミングは支援者によって判断が分かれることもある。それは病状の安定や、精神的な起伏による生活態度の浮き沈みなどを見ての判断になるが、いつもこの判断が悩みどころとなる。

しかしながら、社会復帰や進出におけるゴールを数多く知っている場合は、その判断が明晰である。私はそのゴールの経験数を増やし経験値を高めている最中で、判断にも自信が持てるようになってきた。これが支援の精度となるのだろう。

同時に、当事者にとってのタイミングは、「他人には分からない」という前提で考えることが重要で、「すべて個別事情が違う」という強い意志を持たなければ、当事者を自分の考えという枠組みや制度の枠組みに当てはめてしまいがちだ。こうなると、以前、行政が障がい者に行っていた「措置」行為に逆戻りしてしまう。措置では、必ず人間の存在が奪われるから、決して戻ってはいけない道である。

つながる、からはじまる

 「つながる、から、はじまる-」。シャローム所沢・シャローム和光が周辺の医療機関やコミュニティスペースに設置しているリーフレットの表紙に書かれたキャッチフレーズである。われわれの仕事はまず「つながる」ことからしか始まらない。同時に「つながれば何とかなる」という強い信念を持って活動を続けている。

 つながらなくて、苦しみ悶えている人たちを考える時、1人でも多くとつながって、よりよい生き方を一緒に考えたいとの思いから、このキャッチフレーズをもっと広げたいと、最近はポスターを作成し、周辺の街角に張ることにした。

 自民党や公明党、民進党、共産党や日本維新の会等の選挙ポスターがひしめく中を、「つながる」ポスターが異色の存在として、思いを伝えている。

 以前、この政党ポスター群の中にいる衆議院議員に、ポスターに福祉制度への理解が書かれていたので、メールで精神障害者向けの政策についてお話をしたい旨、申し入れたら、私の自宅には後援会入会の案内が送られてきた。後援会に入らなければお話できないような「仕組み」に失望を覚えたのを思い出す。そんな過去へのあてつけのように、「つながる」ポスターが地元に浸透し、就労移行支援事業自体への眼差しを誘い、そして存在を知ってほしいと心から願っている。

(了)

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コラムニスト

    報告 ID:d7Y1wV8vMP

    私のような障害者を働かせることが一番の問題なのではないか。
    障害者を社会搾取の道具にするべきではないだろう。
    障害者にも、否、尚更カラダを家の中で休む権利も嫌な人とは繋がらなくてすむ権利もあります。

    社会的治療だと?
    馬鹿げている。強制治療であり、ナチスと同じ考えだ。
    自立支援制度に反対です。

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