精神科ポータルサイト サイキュレ - Psychiatry Curation

精神科医療関係者様の会員登録をお待ちしております。  新規会員登録  ログイン

コラム

文科省方針に呼応する声を上げよう
障がい者の生涯学習に現場とメディアは

意欲の多様性

 以前本稿「常識脱し新たな『大学』考えよう」でも紹介した名古屋市にある発達・知的障がい者向けの法定外「見晴台学園大学」の2017年度がスタートした。二学年の課程のうち新入生が3人で、在校生が3人、全学生6人である。私は基礎課程の「教養と人生」の一部を担当しており、まずは第一回目の「メディアと生活」の授業を行った。私の授業に6人はそれぞれ素敵な表情を見せて、対話し、90分の時間をめいっぱいに使った。役割として私は教える立場となったが、学生の学びへの意欲への多様性に気付かされ、彼らへの「教育」の仕方に、探究する必要も感じている。

 文部科学省は特別支援教育の生涯学習化に向けて推進の姿勢を明確にしているものの、その内容の充実に向けては研究者や現場からの声を手掛かりに構築しなければならないから、見晴台学園大学のほか、各地域で特別支援学校卒業後の学びに向けて取り組んでいる施設も、この文科省の方針を受けて、現状を知らせ、未来を描ける声を出していく機会と考えたい。

障害者学習支援推進室の新設

 文科省は昨年12月、「文部科学省が所管する分野における障害者施策の意識改革と抜本的な拡充」を公表した。同時に同省内での体制として「特別支援総合プロジェクト特命チーム」を設置。今年度からは生涯学習政策局に「障害者学習支援推進室」を新設した。

 文科省の方針としては、この推進室を中心に全省的に「スペシャルプロジェクト2020」なる計画進めていくという。

 以前の記事にも書いたように米国では2008年に「高等教育機会均等法」を改正し、全米300の大学で1・0パーセント前後の知的障がい者の受け入れが進められているが、日本では2015年3月の全国の大学進学率が半数を超える社会にもかかわらず、知的障がい者はその数字からは取り残されたまま。「学びたい」という意欲がある生徒の何らかの受け手が必要で、私は「社会の持つ共通の人間観から制度化されるべき」とした。

この実現に向けての可能性が広がるのが、文科省の方針である。

本省と地方が連携し推進

4月7日に松野博一文科相は地方公共団体へのメッセージを通達し、その中で今回の取組みの前提をこう説明する。

「これまでの行政は、障害のある方々に対して、学校を卒業するまでは特別支援学校をはじめとする『学校教育施策』によって、学校を卒業してからは『福祉政策』や『労働政策』によって、それぞれ支援を行ってきました。しかし、これからは、障害のある方々が、学校卒業後も生涯を通じて教育や文化、スポーツなどの様々な機会に親しむことができるよう、教育施策とスポーツ施策、福祉施策、労働施策等を連動させながら支援していくことが重要です。私はこれを『特別支援教育の生涯学習化』と表現することにしました」

「各地方公共団体におかれては、障害のある方々がそれぞれのライフステージで夢と希望を持って生きていけるよう、生涯にわたる学習活動の充実を目指し、生涯学習や特別支援教育、スポーツ、文化、福祉、労働などの関係部局の連携の下、国と共に取り組んでいただきますようお願いいたします」

 つまり、障がい者の学びの継続性を維持し、生涯を通じての学習を国の方針とする姿勢を示したもので、地方自治体に対し、連携を呼びかけるものだと、好意的に受け止めることができる。

 この機会を逃してはならないだろう。見晴台学園のような現場にいる関係者は当事者とともに、その具体案について声を上げていかなければならない。

現場の学び、メディア巻き込み

 4月から始まった私の授業は「メディアと生活」がテーマだが、文科省の掲げる生涯学習の構築に向けては、多くのアイディアが秘められているようで、授業そのものの面白さとともに、授業を受けている学生たちの感性の瑞々しさから、わくわくする可能性を感じている。

「ねえねえ、どう思う?」。

私の授業は、そんな問いかけで学生に考えてもらう。

私が南スーダンのスラム街で子供たちと一緒に撮影した写真を見てもらって、子どもたちが私の体のどの部分を触ったのか、であるとか、朝日新聞の東京発行版と名古屋発行版を見せて、その違いを探してみたり、新聞を見てもらって新しい「発見」を試みたり、と。

メディア研究の目線では、昨今の新聞は、改善点や失望が先行しているイメージだが、今回の授業で新聞を見つめなおすと、まだまだ、私たち社会の中における信頼性の高い情報ツールとしては機能し続けなければならないと実感するとともに、このような障がい者の生涯学習という福祉政策を後押しするための、コミュニティの機能も充実させなければならないと思う。

 だから、文科省の施策をより夢があり、より有効なものにするために、メディアはまだまだ福祉政策に関与すべきであろう。新聞社内のセクショナリズムの中には、いまだに「福祉」の明確な位置づけがないことを憂慮する感性が必要だ。

メディアの中で、福祉分野が「経済」「外信」と同等のポジションで「福祉」が位置づけられることにより、自覚的に福祉の見識を高め、結果的に障害者の生涯学習が充実すると思うのだが、いかがだろうか。

(了)

  • 1580人見ました
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ページの先頭へ

コラムニスト

    ページの先頭へ

    facebookコメント

    ページの先頭へ

    関連コラム

    ページの先頭へ


    Top