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コラム

「生まれてこなきゃよかった」への対応
叫びを受け止め、当事者目線の「愛」

自己肯定のない子供

 「私は親から愛されていない」。そんな苦悩を抱える女子中学生がラインで伝えてきた内容が心を揺さぶる。辛くて切なくて、沸々と怒りがこみ上げてくる。

 それは、この中学生が小学校だった時、母の日の出来事だったという。その女の子が学校で書いた母親への感謝の手紙。そこには「お母さん、産んでくれてありがとう」と無邪気に綴ったが、自宅でそれを読んだ母親は「私は産まなかったほうがいいと思っているけどね」とそっけなかった。手紙とともにプレゼントした鉢植えのカーネーションは、この女の子の頭上でひっくり返され、女の子は「土まみれ」になった。「こんなもの持って来ないでちょうだい」。それがその時の母親のセリフだったという。

女の子の父親は社会的地位も名誉もある人で、この母親も公的な資格を持ち、社会に出て働いていた。傍から見れば理想的な家族であるが、母親のこの態度が示すように、女の子への愛情は決定的に欠けている。自分の存在を消したいと思い続ける女子中学生は、今日もそんな母親に振り回されながら、常に自死を考えながら、暮らしているという。

体験による当事者目線

 この告白は、特定非営利活動法人「若者メンタルサポート協会」(本部・東京都渋谷区)理事長の岡田沙織さんのもとに来た相談の一部だ。岡田さんはブログやフェイスブック、ツイッターで自分自身の壮絶な半生を赤裸々に発信しながら、自傷行為をしたり、虐待を受ける子供たちの相談を無料で受けている。相談内容が壮絶で「今すぐ抱きしめてあげたい」と駆け付けたい衝動にかられながら、岡田さんのラインの着信は休むことを知らない。

 冒頭で紹介した女子中学生は、ラインでつながり、まずはオンライン上でやりとりした後に、自宅に招き入れ、直接話を聞きながら、心の支援を行っている。親の態度を変えさせるのは、NPO法人の力では難しい。今はひたすら、親の代わりに「愛」を注ぐしか方法はない。岡田さんの強みは自らの体験による当事者目線だ。

 「私自身、親の愛情を感じられず、死にたいと思い続けてきましたから」

 岡田さんは、4歳で両親が別れ、祖父の家に預けられてから波乱万丈の半生を送ってきた。いじめ、自傷行為、ドラッグ、チーマーや暴走族、DVなど、あらゆる社会問題を一身で引き受けてきたような日々。現在はそれらの経験を「糧」として、悩みへの対応に役立てている。

 最近は、この中学生のように「社会的地位」が確保している一方で子供への愛情に乏しかったり、虐待する親も少なくないという。いくつかのケースについては、あまりに生々しくここでは報告できないのだが、それが社会の現実であり、それらは「ばれるのが怖い」ことから自治体など公的機関まで情報が行き渡らないケースもある。

だから、「生まれてこなければよかった」という叫びは、そっと岡田さんにラインでつながって、その虐待を告白するのだ。

死にたいは生きたい

「死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい」。

ここでは書ききれない長文のラインのメール。その長さは2メートル。2メートルの「死にたい」を受けた岡田さんはこう返した。

「長いなあ。どれだけ死にたいんだよ!」

こんな返しに「面白い」という若者たちがいる。「だから、沙織さん好き!」と息を吹き返す。同じ目線で立っているからこその、出せる言葉のあたたかさ。そこには、悩みに接する岡田さんの明快な考えもある。

つまり「死にたい、は、生きたい、ってことなんです」(岡田さん)ということだ。

「死にたい子供たちは手を差し伸べれば立ち上がってくるのです。生きるエネルギーを持った子供たちです」。

SNSでつながる

 岡田さんが立ち上げた「若者メンタルサポート協会」は渋谷を本拠に活動をしている。渋谷は岡田さんがドラッグを覚えた場所であったが、若い時代に居場所を求めて、行き着いた安住の地でもあった。

「渋谷は若者が歩いていて自然な街です。そして、ほかの繁華街よりも安全。若者が居場所なくなったら、渋谷に行こうとなる感覚があるんです」

渋谷に本拠を置きながらも、悩める若者たちとの「つながり方」は現代の若者に合わせてSNSだ。岡田さんとつながる7割以上がツイッターで、そのほかはインターネットで「死にたい」と検索すると、岡田さんのページ<https://ameblo.jp/seasky0212/>にたどり着いて、つながっていく。子供や若者の心に寄り添うためには、つながり方も若者目線が必要なのだろう。

さて、岡田さんの壮絶な経験はご自身のブログで赤裸々に展開されているが、それを岡田さんは悩める人の入口と考えている。

「今、私はとても幸せなんです。こうやってお話できることに感謝です」ときっぱり話すところは、憎しみや悲しみを浄化してきたような印象がある。だからこそ、相談する人にとって岡田さんのリアリティは、親が信頼できない状態において救いなのかもしれない。悩める子どもや若者とラインでつながって心の支えになっていく活動を「ライフワーク」と位置づけている岡田さんに寄せられる悩みは日々増加しており、一人で抱えきれないそれらの悩みをどのように対応するのかが今後の課題だ。

(了)

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コラムニスト

    報告 ID:lOoznimm9u

    とても素晴らしい活動ですね。
    無料でかけづりまわる。中々出来ない事ですよね‼岡田さん、頑張って下さいね。応援しています!

      報告 ID:uwR91G4knd

      自分中心に生きているから、人の痛みがわからない。
      子供という弱い立場に当たり散らす。
      ギスギスした社会がこのような親を人間を作り、子供までギスギスしていく。

      かなり根深い問題です。

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