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コラム

熱い「専攻科」の学びに、障害者の生涯学習を考える
福祉型が広がり、学習型を融合していくために

交流は可能性

 第14回全国専攻科(特別ニーズ教育)研究集会が愛知県の愛知県立大学長久手キャンパスで行われた。主に学習障がいや知的障がいのある青年が通う全国の専攻科の学生や専攻科を進路に考えている特別支援学校の生徒をはじめ、研究者や教員、父母が集う全国集会で、約350人が2日にわたって、討議や交流、模擬授業などを行った。大会を通じて初参加していた私は、そこにある「熱」に圧倒されていた。

法定外の見晴台学園大学(名古屋市)の客員教授として、今年4月から学習障がいの学生とともに学びを考え、「大学」運営を身近に感じた私の動機は、就労移行支援事業所を運営して感じた憲法で保障された「学びの平等」の問題、障がいのある子どもにも「学び」を保証すべきだ、という憲法原理的な心の動きからなのだが、今回、全国からの学生の熱に接して、それは権利や義務を超えて、人智学的な可能性であることに気付かされた。

誰もが、全身で、嬉しそうに、学びという名の交流を楽しんでいる。この学びの形は、一つの理想とも思えてくるのだ。

専攻科の歴史

 専攻科とは、障がい者らが通う特別支援学校等の卒業からさらに1年以上の修業年限を設定するもので、一般で高等学校にあたる特別支援学校の卒業後、社会参加に向けた準備をするための期間が必要との認識のもとに成り立っているが、それは、学びの延長というよりは、社会との調整期間であるという指摘もある。

1969年に宮城県の「いずみ養護学校」に設置されて以来、設置されたのは2008年の「光の村養護学校秩父自然学園」(埼玉県)まで、約半世紀に9か所であり、そのうち公立は2006年の国立鳥取大学附属特別支援学校のみ。しかし2008年に、ふたば福祉会たなかの杜「フォレスクール」(和歌山県)が「福祉型」で専攻科を設置して以来、「福祉型」での設置は急速に広がっている。来年には全国に40か所が設置される見込みである。文科省の学習型ではなく、厚労省の福祉型が広まったのは、制度整備の中で、学びの目的を就労という社会参加に絞ったことが、経済原理に組み込まれ、社会に受け入れられやすかったのだろう。

福祉型に経済原理

 福祉型とは、障害者総合支援法に基づく自立訓練(生活訓練)事業や就労移行支援事業を活用したもので、一部は「作業」を学びの中心に置き、「学びの作業所」とするケースもある。これらの専攻科は、2年制のものと4年制のものと大別されるのと同時に、就労した段階で卒業する仕組みもある。すべてにおいて共通しているのが、「学びの場」であるということだ。簡単に特徴を要約すると「技能の取得を目指すのではなく、青年期の人格形成を目的としている」「作業内容を専らとするのではなく、多様な学習内容から構成されている」「授業や活動は、1日、午前1つ、午後1つなど、大きくゆったりした時間枠をとっている」ことが挙げられる。つまり障がいに適用させたカリキュラムを実施しながら、学生らに「学びながら青春を謳歌して、人格形成をする」という思いが根本にある。

 研究集会では文部科学省の担当者が政策の説明をしていたから、現段階では、専攻科に関する政策として不足しているという認識のもとにある。文科省は今年度、「特別支援教育の生涯学習化へ」の政策を打ち出し、来年度から予算化され、各自治体が通達を受けて具体策をもとに動き出すことになるが、現在、現場で先行しているのは厚生労働省の枠組みの「福祉型」の専攻科である。この現実と文科省の「学び」に関する政策を組み合わせて、学びの保障を実践の場から考え、必要な要望を発信する必要があるだろう。

「大学」づくりに向けて

 「学ぶ」。この行為に秘められた可能性を感じる時、私も今、行っている就労移行支援事業とは別のコミュニティ、枠組みが必要であると実感している。就労のために学ぶ、のではなく、自分のために学ぶ、という大きな違い。これを認識しなければ「人格形成のための専攻科」は成り立たないだろう。。

今回の集会で集った全国の生徒たちは、レセプションで大いに食べ、語り、体で喜びを表現していた。そのハイテンションと生き生きした姿、「専攻科で自分の可能性が広がった」と声高らかに話してくれた学生の力強い声、その笑顔は彼ら彼女らの可能性だけではない、社会の可能性だ、などと夢想している。

関西で専攻科を営む代表者は「生徒が青春を謳歌できる。それだけで、大きな成果。社会はその提供をしてこなかった」と話したが、ふと振り返れば、自分が大学の4年間という機関がなかったら、自分という人格はどのように形成されたのか考えると、その大事さが身に染みてくる。

学習障がい者や知的障がい者にもそんな青春を謳歌する機会を与えたいから、その与えるにあたっての制度がないから、まずは枠組みを作ってやるしかない。

これまでの就労移行支援事業の経験や私なりに考えてきたコミュニケーション行為による社会課題のアプローチをベースに、大学づくりに向かいたい。そのプロセスはまたこのコラムで報告していきたい。

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