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コラム

いじめ、炊き出し、双極性障害、冬季うつ、でも母の子に
ココロの詩の最優秀作品「なりたい」が奏でるメッセージ

「うまくいかない」葛藤

 昨年11月から今年初めに生きづらさを抱えた方らからの「ココロの詩」の募集は、予定よりも審査が難航しながらも、先月、最優秀作品に「なりたい」を決定し、季刊誌「ケアメディア」や月刊誌「歌の手帖」等の各メディアで発表された。作品はレコード会社「エイフォース・エンタテイメント社」から制作され、歌手の逢川まさきさんの歌唱でCD「なりたい」としてクラウン徳間から9月11日発売となることも決定した。

先日、レコーディングを終えた逢川さんは就労移行支援事業所で初めて当事者を前にこの作品を歌った。私もその場に居合わせ、聴き手の反応をうかがうと、歌詞として表現された当事者からのメッセージは切ない中にも力強い何かを発していることをあらためて実感できた。それは、人生が「うまくいかない」と生きてきたある男性の葛藤、そして多くの人が生きる中で感じる「想い」でもある。

状態が悪い時に

「なりたい」を書いた程島正幸さんは、1975年大阪市西成区生まれで、小学生の頃に父親を亡くし、複雑な家庭環境で育ちながら、高校卒業後、約10年トラックの運転手をした。母親との仲たがいによって家を出て、派遣の仕事で近畿地方や広島、山口、福井で過ごすが、リストラにより、寝る場を失い、炊き出しでしのぐなどの支援を受けた後、現在は大阪市港区に住む。

双極性障害の冬季うつ病があり、冬季には極端に体調を崩してしまう。作品はその冬の時期、「状態の悪い時に書きました」という。それが「なりたい」だった。

なりたい

花になりたいのです

生まれ変わったら こんどは

花になりたいのです

名前も知らない 野の花に

踏まれてもなお生きる 野の花に

鳥になりたいのです

生まれ変わったら こんどは

鳥になりたいのです

島を巡る 渡り鳥に

自由に羽ばたく 海鳥に

風になりたいのです

生まれ変わったら こんどは

風になりたいのです

綿毛を飛ばす 秋風に

潮の香(か)運ぶ 海風に

雲になりたいのです

生まれ変わったら こんどは

雲になりたいのです

同じ形のない あの雲に

風たなびく あの雲に

みんなと同じになりたいけれど

普通に生きたいだけなのだけど

生まれ変わったら 今度も

私は 私になりたいのです

失敗ばかりの人生だけど

無駄ばっかりの人生だけど

生まれ変わったら こんども

あなたの子供で 在りたいのです

◆まだ和解できず

双極性障害と診断されたのは3年前。リハビリの一環で毎日、文章を書くようになったが、子供のころにいじめにあって友達がおらず、休み時間のたびに学校の図書館で本を読んで過ごしていたのが役立っているかもしれない、という。リストラにあった後は、公園で暮らした時期もあったという。現在は、公的な自立支援センターでの共同生活や就労移行支援事業所での訓練を経て、一人暮らしをしながら就労継続支援B型施設でパンを作っている。

家を飛び出したのが「頑固な母親」との不和が原因であったが、その母親とはまだ和解はしていない。程島さんは「まだ自分に自信がないからですが、今度生まれ変わって同じような状況になったら、もっとうまくやれると思うんです。それを詩に書きました」と語る。

「なりたい」という切実な思い、再度生まれ変わっても不仲の母親の子供に「なりたい」のは、やはり深く美しい言葉の旋律のような気がしている。

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